私たちの生活と切っても切れない銅と電線
私たちの生活に必要不可欠な電気は、発電所で生まれ「電線」という道を通じて私たちの手元へとやってきます。電線にはさまざまな種類や分類がありますが、そのほとんどは銅線をビニールで被覆(おおいつつむこと)した形状になっています。
私たちの生活になくてはならぬ電線ですが、その生産量で日本は中国、アメリカに次いで世界第三位の電線大国であることはあまり知られていません。
しかしその原料である銅鉱石が採れる鉱山は、チリ・ペルーなど南半球の一部の国に偏っており、日本で生産される電線の材料は全て海外から輸入されているものです。しかも新興国の経済成長のなかで世界の銅需要は伸び続けており、USGS(アメリカ地質調査所)の統計によれば今後40年あまりで採掘可能な銅鉱石は枯渇してしまう可能性が指摘されています。
このように限りある銅資源を末永く大事に使っていくためには、一度使った電線から銅を取り出し、再利用するリサイクルはとても重要なことです。
しかしながら現在、細径使用済み電線(電気工事の際に余ったり、解体工事の際に発生する廃電線のうち、細くて銅分の少ないものを言います)の多くは、リサイクルにかかる費用が国内でまかなえないために、海外に輸出されているのが現状なのです。
「企業」「障がい者施設」「地域」が創り出す未来への環境プロジェクトです
福島から始める新しい銅電線リサイクルのかたち
そうした状態の中で、2011年3月に東日本大震災と福島第一原発の事故が起こりました。
突然の自然災害に、私たちは快適な現代生活を支える電気の重要性をあらためて知るとともに原発事故とその後の風評被害に悩まされることになりました。
そうした中でも、特に困難な状況に置かれたのが障がい者の方々でした。元々障がい者施設で行う仕事の量は十分とは言えませんでしたが、震災後の企業活動の低迷・混乱はそれを更に減少させたのです。私たちはこの困難な状況に立ち向かい、障がい者の自立支援のために新しい仕事を地域に創り出す必要に迫られました。
そんな折に舞い込んだのが、地元再生資源業者からの「剥線(銅電線の剥離)作業をやってみませんか?」という申し出でした。
「剥線」(はくせん)作業とは、専用の機材(剥線機)を使用して電線の被覆材であるビニールをはがし、銅線とビニールを分離する作業です。これにより電線から取り出された銅は素材としてリサイクルされ、再び銅製品として生まれ変わるのですが、これまでの剥線機はサイズが大きく、また値段も高価なことに加え、その作業に危険性が伴うため障がい者施設での仕事には不向きと思われてきました。
しかし、細径電線に的を絞った軽量・小型・安全な剥線機が登場したことに伴い、その担い手として仕事の不足に悩む障がい者施設利用者に白羽の矢が立ったのです。
「福島県は電源県である」と言います。戦前は水力発電で、戦後は原子力発電で日本の電源立地上重要な役割を果たしてきた福島は、いま原発事故による負の遺産を背負いつつも、前進しようとしています。そうした福島県にあって、電気の道である「電線」のリサイクルによって障がい者の自立支援を成し遂げることは、私たちの使命だと考えています。
「きずなループ事業」はこのようにして生まれました。
寄せられる支援の手
「きずなループ事業」実施にあたっては、総務省「地域経済循環創造事業」に採択された喜多方市から設備導入に対する支援を受けるほか、経済産業省が実施する「東日本大震災復興ソーシャルビジネス創出促進事業補助金」により当パンフレットを作成するなど各方面からご支援を頂いております。
- きずなループ事業実行委員会事務局
- 024-983-1211
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